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2012年10月16日(火) 15:35
ある悪魔が黒い人間と向き合っていた。悪魔が見詰めている、生きながら炭化した人間は、かつてメシアと呼ばれていた。さらに遡ると、悪魔の友人だったものだ。 その炭は天を仰ぎ両手を組んだ形で固まっていた。致命傷を負った際、自らの存続に見切りを付け、祈りだしたメシアの生命に炎を見舞ったのは、激昂した悪魔だった。 悪魔には神が分からぬ。だがメシアには神が見えていた。メシアは悪魔を蔑んだ。悪魔が我慢ならないような眼差しで、骨の髄まで哀れんだ様子で、不憫だと言った。ゆえに決着が必要だった。 悪魔は興奮状態を脱していた。むしろ思い切り冷めて、黒こげを眺めていた。 「しまった」 ふいに悪魔は炭の頭部に手をかざしたが、触れた途端に首と腕が折れ転げ落ちた。腕を踏み潰して頭部を捕まえ、辛うじて楕円形を保つ頭に脳天から手を突き入れた。 弄ってはみるが、脳漿はとうに気化してい、脳も同様だった。ただ溶け残った奇形の骨がぱりぱりと音を立てた。悪魔はその中に何物かを見いだそうとした。それはもろい人間だった頃の彼らなのかもしれない。次々に崩れていく死に顔に、遥か過去の面影を探したのかもしれない。 夢中で頭部を破壊する悪魔も、やがて残るのは煤だけだと知っていた。 PR |