2025年04月26日(土) 01:26
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
2013年02月18日(月) 22:20
「…いくつのバイクなんだ?」 「250です」 「ほお」 「18歳になったその日に教習所へいきましたよ」 「俺はまだ中型は取れねえな」 「ワルオくんは17歳ですか」 「なあ250は高速乗れるんだよな」 「乗れますよ。でも二人乗りは、」 二人が話し始めると、僕はいつも耳を塞いだ。二人の会話は僕にとって雑音でしかなくて、二人を理解しようだなんて考えも付かなかった。二人は僕と全く違う思考の歯車を持っていて、僕にはそれらを解体して組立て直す忍耐もなければ、遠目から鑑賞する趣味もなかった。 僕は他人が嫌いなのでなく、ちょっとでも関わりたくなかったのだ。平凡な自分を見せつけることに耐えきれないし、過分な期待をすることも間違っていると思った。 僕には一人の女があればよかった。彼女一人ぎりを本当の相棒として、理解者として、恋人として必要とした。彼女は怒りっぽくかつての二人より格段に扱いにくかった。なのに彼女の人間味にだけ魅力を感じた。初めて僕は他人を求めた。彼女も僕に寄り添ってくれた。彼女の歯車は僕のとぴったり噛み合い、滑らかに絡んだ。 僕たちは暴力を振るいながら進んで行ったが、ある人は暴力の目的を善意に求めよと言い、ある人は暴力を用いて上り詰めよと言った。 僕は僕の道に鋼のレールを敷いていた。生き続けることだけを目的とした暴力を強いた。つまり僕は暴力を振るうことそのものを目的とした。 そこに至るまでに、僕は人を啓蒙する言葉を持たず、人の主義主張を矯正する力の使い用をも知らないことに気づいていた。だから僕は彼らをどうすることもできなかったし、する気もなかった。 二人にとっても僕は雑音でしかなかったろう。彼らが手を振りかざしたから、僕は必要に応じて戦い、終わらせたのだ。 僕はふたりきりで構わなかった。ただ巻き込まれたくなかった。そのために、ロウとかカオスとかいう大きな装置の歯車をひとつ壊しただけだ。 バイク云々は当時の法律と名称です。 PR |